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森林整備に必要なコスト~森のためにできることとは~

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こんにちは。ウッドリンクの田村です。

みなさんは日本の森林の現状をご存じでしょうか。日本は国土の3分の2を森林が占めており、過去50年間でこの森林面積はほとんど増減していません。これだけ聞くと、日本は環境破壊がなく、問題のないように感じますよね。
一方で問題となっているのが増え続けている「森林蓄積量」です。皆さんは木を伐って使うことは良くないことだと思っていませんか?違法伐採や森林消滅の問題など、森林を伐らずに守ったり、植えて回復しなければならないのは概ね海外の事情で、森林資源が豊富な日本とは異なります。今の日本では、成長した森林を積極的に使うことが必要なのです。

今回は日本の森林で今起きている問題、正しい森林整備の形と儲からない森林事業の現状、最後にこれから日本全体で取り組んでいくべき内容についてお話します。

1.森林の機能と今起きている問題とは
2.必要な整備とコスト
3.私たちができることとは?

<1>森林の機能と今起きている問題とは

日本の森林は今、森林面積が増加せず蓄積量だけが増加しています。その理由の一つは、安価で大量に入手できる外国産材(輸入材)の増加です。戦後の復興のために植林された木材が、現在収穫期を迎えているものの、使われず放置されています。日本の木材自給率は一時期、2割~3割までに落ち込み、世界有数の森林大国でありながら、使用される木材の6~7割は外国からの輸入に頼っています。木を育てても売れないことにより林業は低迷し、手入れする費用を賄えず、荒廃している森林も少なくありません。

出典:森林・林業学習館

では、山の手入れが行き届かないとどのような問題が発生するのでしょうか。
森林には、木材の生産だけでなく、水を貯え浄化することで「おいしい水」を供給してくれたり、根を土壌の中に広く深く張ることで土砂崩れなどが起こりにくくなったりと、私たちが安全で快適な生活を送るために欠かせない環境を整え、維持してくれています。森林の手入れが行き届かないと、林の中は過密になり太陽光がほとんど差し込まないため、土地がやせ、下草も生えず、根も深く張ることができません。その結果、土壌が流出しやすくなり、台風の被害や豪雨による土砂災害を起こしやすい森林となってしまいます。また、地球温暖化抑止となる二酸化炭素の吸収力も、隣同士の枝葉が重なり合うことで低下してしまいます。今こそ日本の森林資源を活用し、住宅のみならず、公共施設や非住宅、中高層などの建築物の木造化、木材製品の輸出などを促進していく必要があります。

<2>必要な整備とコスト

苗木の植栽から樹木が育って収穫期を迎えるまで、大きく分けて7つの工程があります。

  • 地拵え(じごしらえ)

苗木を山に植え付ける前に、苗木の生育環境をよくするために雑草や低木を取り除く作業を行います。

  • 植栽(植林)

苗木を山の斜面に手作業で1本ずつ植えていきます。スギの場合は1ヘクタール(100m×100m)あたり3,000本程度植えます。

  • 下刈り

苗木が他の草木よりも背が高く成長するまでの5年~10年までの間、毎年夏時期に苗木の成長を妨げる植物を除去します。

  • つる刈り・除伐

苗木が大きく成長し、下草刈りの必要がなくなっても、他植物のツルが幹に巻き付いたり覆いかぶさったりするため、ツルを取り除く「つる刈り」を行います。また、植栽木の成長を邪魔する低木を伐採したり、雪の重さで曲がったり折れたりしている植栽木や、成長が悪く育つ見込みのない植栽木を伐る「除伐」も行います。

  • 枝打ち(えだうち)

植栽から10年~15年経過した苗木は4~8m程度に成長し、枝がついてくるため、枝を付け根から切る「枝打ち」を行います。節の少ない高級材の生産や林床に光が届くことで下層植生の繁茂により土砂災害等を防ぐ効果があります。

  • 間伐(かんばつ)

植栽から20年~30年経過すると、林の中は混みあってくるため、樹木の一部を伐採する「間伐」を行い、林内環境を良くして樹木が健康に育つようにします。1本1本の木が適切な間隔を保つことで、残された木々は枝葉を広げることができ、より多くの光が降り注ぐようになって健全に成長することができます。

  • 主伐(しゅばつ)

何度か間伐を繰り返し、最終的に行われる伐採を「主伐」と言います。スギの場合は植栽後50年前後で柱や板の材料となれるだけの太さまで育ち、収穫の時期を迎えます。

以上のように、植栽から主伐まで50年~60年という長い年月をかけて計画的な森の整備が必要です。主伐の後は伐採された木を利用しやすい長さにカットする玉切りや、搬出・運搬などの作業があります。
森林の整備で大切なのは「植える、育てる、収穫する、上手に使う」という循環サイクルです。植えて育てた後は、収穫(伐採)をしなければ新しい木を育てることができません。また、林内密度を調整する「間伐」は、森林環境を整備するうえで必要不可欠な作業です。
一方、現在の林業は、間伐をはじめとする森林の整備(手入れ)や、主伐(収穫のための伐採)を行っても採算が取れず、赤字になってしまうのが現状です。1ヘクタール(100m×100m)の土地でスギを60年かけて育てた場合にかかるコストはトータルで1500万円以上と言われています。国からの補助金を含めても採算を合わせるためには単価1万円程度の丸太を数万円に値上げしなければなりません。当然、市場価格よりも高い丸太は売れません。また、かつては間伐された木を炭や割りばしなどの原料として利用されていましたが、現在は搬出コストによる採算が合わず、間伐木が山に放置される伐り捨て間伐も増えてしまっています。

<3>私たちができることとは?

実は今、木材や木製品との触れ合いを通じて木材の良さや利用の意義を学んでもらう、イベントの開催や様々な取り組みが行政や木材関連団体、NPO、企業等で全国的に広がってきています。例えば、林野庁では、身の周りの物を木に変えたり、建築物を木造・木質化したりするなど、木の利用を通じて持続可能な社会へチェンジするという「ウッド・チェンジ」を合言葉に情報発信や普及イベントの開催への支援などを行っています。
今、私たちができることは、身近な商品を購入する際に、国産木材を使用した製品を選ぶことです。国産木材を原材料とする製品を使うことで、林業や木材関連業界に貢献し、所得の向上や雇用の創出につながります。森林の恵みを持続的に残していくためには、日本の森林を健全に保つ必要があります。その担い手となる森林・林業に関わる人々が安定して生産活動を継続できるよう、今、私たちの1人1人の行動を変えることが日本の林業の未来に繋がっていきます。

ウッドチェンジ特設サイトはこちら

https://event.rakuten.co.jp/area/japan/woodchange/

<まとめ>

木を沢山使うことは良くないことだと思っていませんでしたか?日本の森林は今、成熟した木材が使われず放置され問題となっています。大切なのは、「植える、育てる、収穫する、上手に使う」という循環サイクルです。国産木材を使用した製品を使うことで、その消費によって森林や林業に携わる方々の所得の向上や雇用の創出につながります。
「木と人」は国内の林業再生への強い使命感を持ち、北陸・中部圏の林業・森林組合から良質な丸太を調達し、富山県内のJAS認定工場(ウッドリンク)で製材しています。これからも私たちは、国産杉製品を通して日本の森林資源の価値を伝え、森林と人が深くかかわることを目指して活動をしていきます。