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オフィス・商業施設での「木造化」と「木質化」

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こんにちは。ウッドリンクの多賀です。

最近、有名企業のおしゃれなオフィスをテレビなどで見かけたことはありませんか?
有名企業では社員の働きやすさに配慮したオフィス整備をしている例が多いのですが、そこでよく目にするのが内装に「木」を多く取り入れたものです。
木を使った内装はぬくもりが感じられ、見ていても飽きず、動画映えもしますよね。また木は「疲れにくい」「リラックス効果がある」など、社員のパフォーマンス向上にも貢献します。
ただし「木」を使った内装は決して安くはありませんし、越えなければならないハードルがあります。それでも選ばれるようになってきたのは理由があります。

今回は、オフィスや商業施設に木が使われるようになった事情と、木造化・木質化を進めるにあたっての問題点についてお話したいと思います。

<1>なぜ建築物は木造化・木質化に向かっているのか
<2>木造化・木質化をすすめる問題点とは
<3>内装制限について

 

<1>なぜ建築物は木造化・木質化に向かっているのか

以前まで、オフィスなどの建築物はできるだけ簡素に安くすませたいという要望が多かったのですが、ここへきて「木造化・木質化」の需要が高まっています。
それには2つの理由があります。

1つは、国が推し進めている「木材利用促進法」の影響です。この法律は、伐採時期を迎えた日本の森林資源の有効活用や地域経済の活性化、木材の炭素貯蔵効果を利用した脱炭素を目的とし、公共建築物での積極的な木材利用を定めたものです。基本は構造体である柱や梁に木を使う「木造化」が求められていますが、木造化が困難な場合には「内装木質化」が求められています。2021年10月に改正され、対象が住宅や民間施設にまで広がりました。
この法律の制定で、2010年の法律制定時には17.9%だった3階建て以下の公共建築物の木造化率が、2021年には29.4%に上昇しました。

資料: 林野庁プレスリリース「令和3年度の公共建築物の木造率について」(2023年3月24日付け)

 

もう1つは、建設業界の「2023年問題」です。
都市部では数年前から高層ビルの建設ラッシュが進んでいましたが、大規模なオフィスビルが次々と完成を迎えるのが2023年です。都市部のオフィス面積が急拡大したことで、賃貸オフィスの空き室が増加しています。2020年からのコロナ禍によるオフィス離れからも回復しきっていない中、貸ビルのオーナーなどは苦戦を強いられています。

そこで注目されているのが、建物の木造化や内装の木質化でオフィスに付加価値を加える取り組みです。木を使うことはSDGsやカーボンニュートラルに繋がる取り組みであるため、大企業としての使命を果たすことにもなります。魅力あるオフィスを創ることは企業の魅力にもなり、人材の確保にも繋がります。
これは商業施設でも同じで、木質化により快適な空間となれば、滞在時間の延長により経済効果が生まれます。

このように今、建築物の新しい価値を考えるフェーズに入ってきているのです。

 

<2>木造化・木質化をすすめる問題点とは

建築物を木造化・木質化するためには、クリアしなければならない課題があります。
その1つが「耐火性」です。

規模の大きな建築物や、不特定多数の方が利用する建築物では耐火性を高め、万が一の火災時に安全に避難できるようにすることが重要です。耐火性を高めるためには燃えにくい材料を使うことが基本になりますが、木材はご存じの通り燃えます。
そのため木造建築物の場合は柱や梁などの構造を木材で作り、表面に石膏ボードを貼る方法を採用することが多いのですが、これでは構造に使った木材が隠れてしまい、木の良さが半減してしまいます。
さらに大規模高層ビルなどは、木造で耐震性を十分に確保する技術もまだ発展途上です。規格化されていないためコストもRC造、SRC造より高くなってしまい、現実的ではありません。

そこで次の手段として「内装木質化」が検討されています。
「内装木質化」は、天井や床、壁、窓枠などの屋内の目に見えるところに木を使うことです。
構造体をRC造とすることで耐火性はクリアできるので、内装仕上げとして木を使うことも可能になります。ここでもう1つネックとなるのが、建築基準法に基づく「内装制限」です。

 

<3>内装制限について

内装制限とは、壁や天井に燃えにくい材料を使うことで、火災の拡大や煙の発生を遅らせるための規制です。炎は上に向かって広がるため床は規制の対象外です。
燃えにくい材料とは「不燃材料」「準不燃材料」「難燃材料」のことで、一般的に定められている材料(告示で定められた材料)の他に、燃えにくさを試験した上で認定を取得した商品もあります。燃えにくさは不燃材料>準不燃材料>難燃材料の順で高くなります。
建物の規模や、用途、構造体の耐火性等によって、規制の範囲や使用しなければならない材料のランクが変わります。残念ながら、不燃材料、準不燃材料として告示で定められた材料の中には木質系の材料はありません。
耐火の制限で木造が厳しかったように、内装制限でもまた木質化には厳しい条件となっています。
このような理由から、大規模な建築物ではこれまでは内装仕上げに木が使われることはほとんどありませんでした。

しかし最近では、不燃材料・準不燃材の認定を取得した木質内装材が増えてきたことで、内装木質化にチャレンジする企業も増えてきました。認定を取得していない材料でも、緩和措置や適用除外などを駆使して、設計で上手に回避する方法もあります。
耐火や内装制限については各市町村で見解が異なる場合があり、慎重な対応が必要となりますが、実現させる方法はあります。国としても進めたい取り組みであり、事例も徐々に増えていることから、今後はさらに内装木質化が実現させやすい時代になると思います。

内装を木質化することで、木材の持つ心理的・身体的なストレスを緩和する効果や、調湿作用・抗菌作用を滞在空間に取り込むことができ、快適な執務スペースや商業空間を実現できます。オフィスでは生産性の向上、商業施設では滞在時間の延長により経済効果や企業ブランディングにつなげることもできます。
内装の木質化に取り組み建築物の新たな価値をつくっていきませんか。

 

<参考資料>
複雑な関連法令をわかりやすく整理した「内装木質化ハンドブック」(発行;公益財団法人PHENIX)

 

<まとめ>

国が進める「木材利用促進法」や、昨今の脱炭素やSDGsへの注目の高まり、付加価値をつけて選ばれる建築物とするために、建築物の木造化や内装木質化が注目されています。
顧客サービスの向上、事務環境の改善等に寄与することを目的として、オフィスや商業施設の木質化は今後さらに進んでいくことでしょう。
木造化・木質化には、耐火性や内装制限だけではなくコストの問題など、越えなればならないハードルが多くありますが、最近では認定取得木材の使用や設計上の工夫で、木材を上手く使う方法があります。

ウッドリンクでは、非住宅建築物のスペシャリストが在籍し、木造化・木質化をプロの目線からアドバイスいたします。木造化・木質化に取り組みたい設計者の方、内装木質化で付加価値をプラスしたいビルオーナー様、ご興味があればお気軽にご相談ください。

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